和歌山の磐座


熊野速玉大社摂社・神倉神社くまのはやたまたいしゃせっしゃ・かみくらじんじゃ
和歌山県新宮市神倉1-13-8


■熊野三山の神が降臨したゴトビキ岩

 『日本書紀』の神武天皇即位前紀 戊午年六月の 条に、このような記述がある。
 遂に狭野を越えて、熊野の 神の 邑に到り、 則 天磐盾に登る。
 のちに神武とよばれるイワレビコ(磐余彦)が、 東征の途中、難波から大和に入ろうとしてナガス ネビコ(長髄彦)の反撃にあい、捲土重来を期し て熊野から大和に入ろうとする場面だ。
 ここにいう「天磐盾」に擬せられた巨石が、神倉神社の 神体として祀られている。「ゴトビキ岩」とよばれ、 新宮市の象徴ともなっている。ゴトビキとは、この 地方の方言でヒキガエルのことだという。名のとおり、 巨大なヒキガエルがうずくまっているようにも見えるが、 男根に似ているという説も根強く存在する。そのためか、 熊野地方ではゴトビキ岩を陽石に、三重県の 「花の窟」を陰石に見たてて信仰してきたと伝わる。
(『磐座百選』より一部抜粋)





河内神社こうちじんじゃ
和歌山県東牟婁郡古座川町宇津木171


■岩島そのものを神体として祀る河内島

 古座川の河口から3キロほど上流に、コオッタ マ(河内様)とよばれる花崗岩の岩島がある。河内島だ。 「河内祭」のとき、周囲を舟がめぐるこ とから「まわり岩」ともよばれ、紀州藩が編纂し た『紀伊続風土記』の宇津木村の項には「河内明 神」と記されている。
 村の巳の方、古座川ノ中にあり、高さ15間 許、周50間許の巌山の小島なり。これを神 として祠り、高川原・吉田・宇津木・月野瀬 四箇村の氏神とす。古より土人此 この島に登りし ことなく、島中の草木にかりにも手を触るこ となし。
 15間とあるので、30メートルほどの高さだ ろうか。古座川に浮かぶ「川中島」だ。野本寛一 氏は『神々の風景』で、瑞垣は、発生的には「聖 地をめぐる水の垣」を意味し、文字通り「水垣」 であったとし、それを実感的に示してくれるのが 河内様のような川中島であると指摘している。
(『磐座百選』より一部抜粋)




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